まちづくり

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公園から始まる、まちの未来設計。恵比寿南一公園リニューアルに込めた「緑のリレーション戦略」

恵比寿のまち
いまのはなし

恵比寿ガーデンプレイスから徒歩2分。
恵比寿南一公園では、木を植え、芝を張り、日陰と居場所をつくる。
緑を軸にした公園の整備が進められてきた。

この取り組みは、単なる景観改善ではない。
恵比寿南一公園の再リニューアルは、夏の日差しを和らげたいという、公園の現場からの実感が大きなきっかけになり、始まった。
その声に、設計・管理・運営それぞれの立場が応答し、緑を軸とした公園のあり方が、少しずつ形になっていった。

緑は人にどんな影響を与え、公園は都市にどんな関係性を生み出すのか。
今回の取り組みを、恵比寿南一公園の管理・運営事業者である「サッポロ不動産開発」高木氏、つくり手である「トシ・ランドスケープ」中村氏、プレーパーク運営を担う「渋谷の遊び場を考える会」野澤氏・実川氏、それぞれの視点から振り返る。

左から「サッポロ不動産開発」高木、「渋谷の遊び場を考える会」野澤氏、実川氏、「トシ・ランドスケープ」中村氏

サッポロ不動産開発が「公園」という場に関わり続ける理由

──当社は、商業施設やオフィスなど、さまざまな形でまちづくりに関わっています。その中で、なぜ公園管理を行っているのでしょうか。

高木:2021年から、恵比寿南一公園の指定管理者として、”まちのつながり“を育む拠点となることを目指して管理運営を行ってきました。そんな中、私たちは昨年から、「ひらめきが生まれるまち」というビジョンを掲げ、恵比寿のまちづくりに取り組んでいますが、恵比寿の特徴は”刺激や機能”が十分にそろっていると同時に“ゆとりや余白”も共存しているところにあると考えています。日常の中で誰もが立ち止まり、無意識の緊張をほどくことができる場として、公園という存在が、実はゆとりや余白をまちに広げていく過程で、無くてはならない場所なのでは、と改めて実感しています。

──公園ならではの役割がある、と。

野澤:公園って「行かなければならない理由」がない場所ですしね。居てもいいし、通り過ぎてもいい。誰に対しても開かれていて、人の状態がとても正直に出る場所だと思っています。

高木:そして、公園には人が自然と集まる。ひらめきって、一人で考え続けているだけではなかなか生まれない。人の気配や、ちょっとしたやり取りがあることで、思考が動き出すことも多い。その点でも、公園は私たちのまちづくりビジョンと相性がいい場所でした。

恵比寿南一公園に感じていた、人が集う場所であり続けるための課題感

──そうした視点で恵比寿南一公園を見たとき、どんな課題がありましたか。

野澤:一番大きかったのは、やはり暑さです。夏の暑さが年々厳しくなって、地面の照り返しも強い。日陰がほとんどなくて、「今日はここで過ごすのは難しいな」と判断せざるを得ない日が増えていきました。

高木:南一公園は、土を中心としたプレーパークとして運営してきました。ただ、老朽化等により樹木を伐採する必要が出たこともあり、環境としてはかなり厳しくなっていました。人が居続けられない状態では、公園の役割を果たせない。そんな現場の声がありました。

──「守りたい」という思いだけでは、打開できない状況だったのですね。

野澤:そうですね。だからこそ、「どうすれば無理なく公園としての機能を保ち続けられるか」を、真剣に考える必要がありました。

「日陰」を、あえて木でつくるという選択

──暑さ対策には、さまざまな方法が考えられたと思います。その中で、なぜ「木を植える」ことを選んだのでしょうか。

野澤:日陰をつくるだけなら、人工物でもできます。でも木は、植えた瞬間に完成するものではない。時間をかけて育ち、季節ごとに表情が変わる。その変化を、公園を使う人も、運営する側も、一緒に受け止めていくことになる。それがこの場所には合っていると感じました。

──設計の視点から、この判断をどう捉えましたか。

中村:機能だけを見れば、日陰は構造物でも良いと思いますが、でも緑が持つ決定的な違いは、「生きている存在」だということです。木は光合成をして、葉から水分を放出し、都市の空気に潤いを与える。温度を下げるだけでなく、空気の質そのものを変えていきます。「緑の中にいると気持ちいい」と言われますが、それは単なる感覚論ではなく、身体が実際に反応している状態だと思っています。完成されたモノが“置かれている”のではなく、育ち続ける環境に身を置くことで、人の思考も少し柔らかくなる。その作用は、人工物にはありません。

「見る緑」ではなく、「関われる緑」をつくる

──植栽計画で、特に意識したことは何でしたか。

中村:何のために木を植えるのか、を明確にすることです。今回は、景観を整えるためというよりも、人がそこに居続けられる環境をつくることが目的でした。将来しっかり木陰ができる樹種を選び、クヌギはどんぐりが落ちる、ムロクジは実で遊べる。眺めるだけでなく、行為の中に入り込む緑を意識しました。

──芝生についても同じ考え方ですか。

中村:はい。コウライシバではなくノシバを選びました。少し野原に近い感覚ですね。蒸散によって空気に潤いを与える点も含め、構造物では代替できない価値があると考えています。

公園の中に生まれた、さまざまな「居方」

──整備後、公園の使われ方に変化は感じていますか。

実川:まだ整備の途中段階ですが、芝生ができたことで、公園の中にいくつかの“居方”が生まれました。走り回る人もいれば、少し離れて座る人、ただ立って様子を見ている人もいる。以前は過ごし方や遊び方の選択肢が少なく、自分に合わないと感じると離れてしまうことが多かったと思います。

野澤:今は、同じ時間・同じ場所にいながら、それぞれが自分なりの関わり方を選べる。その共存が、無理なく成り立つようになった感覚があります。

公園は、子どもだけのものじゃない

──恵比寿南一公園は子どもが集う印象も強いですが、大人にとってはどんな場所だと思いますか。

高木:公園は本来、年齢や立場を問わず使える場所だと思っています。働く人、暮らす人、訪れる人、それぞれがそれぞれの状態で関われる。その中で、子どもが緑の中でのびのび過ごしている風景があること自体が、まちの魅力にもなっていると思います。

野澤:子どもだけを見ているつもりはないんですよね。芝生や木陰があることで、大人も自然と立ち寄れる。結果として、公園全体の空気がやわらかくなっている気がします。

最後に。公園から、まちの「ゆとり」を育てていく

──最後に、今の恵比寿南一公園をどんな場所だと感じていますか。

実川:“うまくいっている”というより、“面白くなってきた”という感覚です。同じ場所にいながら、誰一人として同じ使い方をしていない。でも、不思議と落ち着いている。その状態が、すごく健全だなと思います。

野澤:公園って、完成した瞬間がゴールじゃないと思っていて。木も芝も、人の使い方も、これから先ずっと変わっていく。その変化を先回りして整えすぎずに、起きていることを受け止めながら続けていけたらいいな、と思っています。

工事中のウッドデッキ

──その様子を、事業者の立場からはどう見ていますか。

高木:都市の中に、人が少し気持ちをゆるめられる場所をどう仕込んでいくか。今回はその試行錯誤の一つだったと思っています。恵比寿は、すでに成熟した街です。刺激は十分にある。その一方で、働く人、暮らす人、訪れる人が行き交う中で、無意識の緊張も積み重なっていきます。だからこそ、木陰や芝生といった緑の力を使って、思考を解放できる“ゆとり”を街の中に点在させていくことが重要だと考えています。緑化整備を通して得た気づきを、他の場所へ、他の取り組みへとつなげていく。緑を増やすこと自体が目的ではなく、その先にある人の状態の変化こそが、ひらめきが生まれるまちの土台になる。これからも、緑を使った“ゆとり”の実装を、恵比寿のまち全体で積み重ねていきたいですね。

リリースはこちら https://www.sapporo-re.jp/news-release/2026/04136073/

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