恵比寿で30年。だから分かる、スタートアップが伸びる場のつくりかた Sreed EBISU+L開発秘話
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オフィス選びで、賃料や広さ以外に何を見るべきか。恵比寿のまちと30年向き合ってきた当社が、スタートアップ向けオフィス「Sreed EBISU+L」で実践した「まちと育つオフィス」のつくりかた。アートとグリーン導入の裏側から、開発担当者2名が初めて語る。
渋谷から一駅。その違いが生む価値
——まず率直にお聞きします。恵比寿は渋谷から一駅。この違いをどう捉えていますか?
松本 :朝、渋谷駅を降りて、混雑をかき分けて自分のオフィスまで歩く。それと比べると、恵比寿は駅を降りた瞬間から違います。ちょうどいい人通り、緑もあって、ちょうどいい距離感。通勤だけで疲れない。実はこれ、すごく大きな価値なんです。
山下:渋谷には今、IT企業が集中していて、スタートアップから大企業まで活発に動いている。その隣にある恵比寿を選ぶ方って、自分たちの感性や方向性をすごく大切にされている印象があります。渋谷の新しいビルや新しい動きから少し離れて、「自分たちの事業ってなんだっけ」「どの方向に行きたいんだっけ」って、立ち止まって考えられる。そういう段階の企業が恵比寿を選んでくださっています。

——働く場所としての恵比寿の強みは何でしょう?
山下:飲食店の幅が圧倒的に広いんです。ランチを食べる店もあれば、接待に使えるお店もある。スタートアップの経営者が社員とカジュアルに会話したい時に使える店も。内見の時には、そういう周辺情報も含めてご案内しながら、働くイメージを持っていただいています。
松本:よくお会いする経営者の方で「恵比寿がいい」とおっしゃる方は、大体ご自身が恵比寿に住まれているか、恵比寿に愛着がある。会社の周りに飲食店が揃っていて、ビジネスとして非常にやりやすい。これ、地味に見えますが、採用面でも効いてくるんです。
恵比寿ガーデンプレイス、30年が教えてくれたこと
——恵比寿ガーデンプレイスの開発から30年が経ちました。
松本:はい。恵比寿ガーデンプレイスは、元々サッポロビールの工場があった場所を再開発したもので、1994年に誕生しました。30年間、このまちのランドマークとして、まち全体と共に成長してきた実績があります。
——その30年の経験が、Sreedシリーズにどう活きているんでしょうか?
山下: 一番大きいのは、「まちと共生する開発」という思想が根付いていることです。恵比寿ガーデンプレイスは単なる商業施設やオフィスビルではなく、まちの人が集まる場所、文化を発信する場所として機能してきました。その思想を、Sreedシリーズにも継承しています。
松本:私たちは恵比寿という一つのまちに絞って開発をしています。東京でも大阪でも同じものを作る「金太郎飴」のようなやり方ではない。だからこそ、このまちの性質、どういう方が選んでくれるのか、どういう飲食店があるのか、そういうことを深く理解できている。
——「まちを知っている」というのが強みになる。
松本:そうです。例えば私、以前は外食業界にいたので、内見の時に「この辺にこういうお店がありますよ」「ランチならこのエリア」「接待ならこのお店」って、具体的にご案内できるんです。これ、意外とお客様に喜んでいただけます。
——Sreedシリーズについて、改めて教えてください。
山下:Sreedは、サッポロ不動産開発のSREと、種を意味するseedを掛け合わせた造語です。これから発芽していく、成長段階のスタートアップ企業を応援したいという思いから名付けられました。今回のSreed EBISU+Lで6棟目になります。シリーズとして、規模は10坪クラスから始まって、30坪の+C、そして今回の50坪クラスの+Lまであります。最終的には恵比寿ガーデンプレイスのオフィスタワー、100坪クラスまで成長段階に応じておオフィスを選んで頂けます。
松本:企業の成長段階に合わせて選べるラインナップになっています。実際に、30坪の+Cと50坪の+L、両方を内見される経営者の方もいらっしゃいます。「今は30坪でいいかなと思ってたけど、2年後を見据えたら50坪の方がいいかも」って判断される。そういう成長曲線を、私たちはサポートしたいんです。
——今回の「+L」という名前の由来は?
山下:Lは、Lamp(ランプ)です。この土地を取得した2年前、このエリアは夜になると結構暗かったんです。線路の西側は飲食街で明るいんですけど、東側は住居が多くて、街灯も少なく、人通りもあまりない。ここに50坪のビルを建てる時、「このエリアの活気を作り出す灯りになりたい」と思いました。温かくこのエリアを灯す。それがプラスLという名前の由来です。

「ひらめき」を生む空間とは?アートとグリーンの実験
——今回、Sreedシリーズで初めてアートとグリーンを大胆に導入されました。その背景は?
山下:恵比寿まちづくりの戦略に「ひらめき」という言葉があって。でも、開発チーム全員が「ひらめきって何?」って疑問に思ったんです。「ひらめきっていつ生まれてる?」「何がひらめき?」って、すごく話し合いました。それで、行き着いたのが、「五感を刺激されると、新しい発想が出てくる」ということでした。
松本:何か新しいものを見たり、聞いたり、触ったり。そういう刺激が起きた時に、今までになかった発想がぱっと出てくる。じゃあ五感を刺激する要素を入れよう。その中で、オフィスにあって自然で、デザイン性の良いものとして、アートとグリーンを選びました。


——ただ、アートは飾るのではなく、壁面に描くという選択をされた。
山下:最初は、飾ったり置いたりする方が、退去時に替えが効くし、管理しやすいという意見もありました。でも、それだと家にあるのと変わらない。わざわざこのオフィスじゃなくてもいい。せっかくだったら、「私たちがこのアートをオフィスに入れて、このアートで刺激を受けてください」って胸を張って言えるようにしたかった。だから、アートそのものがオフィスの一部になる、壁面という形にしました。




——投資判断としては、かなり大胆ですよね。
松本:正直、社内でも議論はありました。でも、私たちが目指しているのは、「社長が『ここでいいね』って決めるオフィス」ではなく、「従業員の生産性が上がって、モチベーションが上がって、会社が成長するオフィス」なんです。社長は、従業員が成長して会社が次のステージに行くために借りるわけですから。
——アーティストの選定プロセスが特徴的だとお聞きしました。
山下:株式会社NOMALという会社と共同して、4名のアーティストに参加していただきました。ただ、アーティストの方って、会社員としてオフィスで働いた経験がない方が多いんです。だから、まずその文脈を理解してもらうことがすごく大事だねと。最初は恵比寿ガーデンプレイスの会議室で話していたんですけど、「これじゃ伝わんないよね」って。それで、まちに出て一緒にフィールドワークをしました。
松本:それから、他のSreed物件の入居企業さんにもご協力いただいて、実際にインタビューをさせてもらったんです。アーティストさんと一緒に、入居企業さんの会議室をお借りして。「オフィスにアートがあるってどう思いますか?」「普段どういう風に働かれてるんですか?」とか。そういうのを全部インスピレーションにして、最終的に描いていただく。
山下:建設中の現場にもヘルメットをかぶって何度も来ていただきました。「この壁面に描きます」って、空間の広さを体感してもらって。2階が出来上がった段階では、机と椅子も一緒に選びました。アートと合わないと、違和感になっちゃうので。実は、フロアによって什器の色味などを若干変えているんです。
——他社の事例だと、そこまでやらない?
松本:大体、発注者がアートディレクションをできる企業に「こんなイメージで」って提案して、「こんなイメージできてます、これでいいでしょうか」で終わるそうなんです。アーティストさんと発注者が直接会うことは、あまりない。でも私たちがやりたかったのは、アーティストさんと一緒に作り上げていくこと。言葉で直接お話して、最後に成果として出していただく。それが描いていたシーンでした。
——入居後のフォロー体制についても特徴的だとお聞きしました。
松本:私、結構頻繁に物件に行くんです。そうすると、社長も出てきてくださって、「ああだよね、こうだよね」って小さな気づきを拾える。問い合わせが来てから行くのではなく、たまたまいて「どう?」って聞ける。「どういうところ改善してほしい」とか「こういうこと今考えてる」とか。そういうところに私たちって価値が出せるかなと思っていて。近い存在でありたいんです。
山下:一般的なディベロッパーは、いろんな土地で開発をしていて、同じようなものを作る。効率的だけど、それってまちと向き合っているわけではない。私たちは恵比寿に絞っている。だからこそ、このまちの性質を深く理解できている。まちと向き合っているんです。
Sreedブランドの未来と、次の恵比寿
——今後の展開について教えてください。
山下:五感を刺激するという意味で、視覚以外にも可能性があると思っています。嗅覚、聴覚、触覚。例えば、エリアごとにアロマがあったり、ふわふわする椅子があったり。遊び心も、恵比寿らしさかなと。
松本:入居企業同士のコミュニティも作っていきたいですね。Sreedシリーズで、共用で使えるスペースがあって、そこで自然に交流が生まれる。私たちもたまにそこにいて、気軽に会話できる。そういう場を提供できたらいいなと思っています。
——最後に、オフィスを探している方へメッセージを。
松本:私たちは、近い存在でありたいと思っています。オフィスの相談だけじゃなくて、恵比寿のまちのこと、飲食店のこと、働き方のこと。そういうことも含めて相談してもらえたら。それが、恵比寿のまちと30年向き合ってきた私たちだからこそできることです。
山下:賃料や広さだけでオフィスを選ぶのではなく、「ここで働くことが、会社の成長につながるか」という視点で見てほしい。アート、グリーン、街のリソース、そして私たちのサポート。すべてを含めて、恵比寿で一緒に成長していきましょう。